コトゴトの散文

日常のコトゴトが題材の掌編小説や詩などの散文です。現在は「竹取物語」を遊牧民族の世界で再構築したジュブナイル小説「月の砂漠のかぐや姫」を執筆中です。宜しければ、ひとときおつきあいください。

【掌編小説】 近未来デイサービス

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 久しぶりやね、元気やった? 

 こっちは元気にしてるわ。

 お互いええ年で耳遠いしな、メールなんぞ送ってみた。どや、懐かしいやろ。

 そうそう、この文章は手打ちやで。

 そらそうや、音声入力ソフトなんか、わしの関西弁をよう拾ってくれへんからな。

 若い子らはえーけどな。子供のころからそういう環境で育ってるから、みんな、そらまぁキレイな標準語をたぁーとしゃべって、ほんまに、しゅっとしとるわ。

 便利いうたら便利なんやろけどな。でも、機械も何でもはしてくれへんからな。ほら、わしらが働いとった工場でも、細かい仕上げとか人間がしとったやろ。いや、ちゃうねん、機械がでけへんのとちゃうねん。結局な、機械をイチイチ調整して対応するよりな、人間が機械に合わせた方が安いことがようけあんねん。そらそやで、結局はコレやで。

 いまでもそやろ。こんだけ機械が発達して、テレビやら掃除機やらも声掛けたら勝手に動きよるし、外に出て飯食う時も、タクシーは自動運転で、飯屋はロボットが注文取りに来てくれるっちゅう感じやしな。

 そやけどなぁ、いまでも、人間が機械に合わせないかんところもようけあるねんで。

 

 (ピンポーン)

 

 ああ、デイサービスの迎えが来たわ。そうそう、これもそうやわ。

 ほな、行ってくるわ。

「正しい音声入力のための話し方教室」

 まさか、こんなんが義務的デイサービスに組み込まれるとは、わしらのオトンオカンの時には考えられへんかったよなぁ。ほな、またな、体に気ぃつけてな。