久しぶりやね、元気やった?
こっちは元気にしてるわ。
お互いええ年で耳遠いしな、メールなんぞ送ってみた。どや、懐かしいやろ。
そうそう、この文章は手打ちやで。
そらそうや、音声入力ソフトなんか、わしの関西弁をよう拾ってくれへんからな。
若い子らはえーけどな。子供のころからそういう環境で育ってるから、みんな、そらまぁキレイな標準語をたぁーとしゃべって、ほんまに、しゅっとしとるわ。
便利いうたら便利なんやろけどな。でも、機械も何でもはしてくれへんからな。ほら、わしらが働いとった工場でも、細かい仕上げとか人間がしとったやろ。いや、ちゃうねん、機械がでけへんのとちゃうねん。結局な、機械をイチイチ調整して対応するよりな、人間が機械に合わせた方が安いことがようけあんねん。そらそやで、結局はコレやで。
いまでもそやろ。こんだけ機械が発達して、テレビやら掃除機やらも声掛けたら勝手に動きよるし、外に出て飯食う時も、タクシーは自動運転で、飯屋はロボットが注文取りに来てくれるっちゅう感じやしな。
そやけどなぁ、いまでも、人間が機械に合わせないかんところもようけあるねんで。
(ピンポーン)
ああ、デイサービスの迎えが来たわ。そうそう、これもそうやわ。
ほな、行ってくるわ。
「正しい音声入力のための話し方教室」
まさか、こんなんが義務的デイサービスに組み込まれるとは、わしらのオトンオカンの時には考えられへんかったよなぁ。ほな、またな、体に気ぃつけてな。