コトゴトの散文

日常のコトゴトが題材の掌編小説や詩などの散文です。現在は「竹取物語」を遊牧民族の世界で再構築したジュブナイル小説「月の砂漠のかぐや姫」を執筆中です。宜しければ、ひとときおつきあいください。

これまでのあらすじ⑱(「月の砂漠のかぐや姫」第81話から第83話)

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 パソコンの不調により中断が長引いたため、再開にあたり第一話から中断したところまでの物語を、一度振り返りたいと思います。

「最初から読んでなかった」という方もこれで安心、すぐに本編に追いつけます!

 これからも、竹姫や羽たちと共にゴビの砂漠を旅していただけたら、作者としてこれ以上うれしいことはございません。

 よろしくお願いいたします!

 

 

※これまでの物語は、「月の砂漠のかぐや姫」のタブでもご覧になれますし、下記リンク先でもまとめて読むことができます。

 

www.alphapolis.co.jp

 

 

【竹姫】(たけひめ)【輝夜姫】(かぐやひめ) 月の巫女とも呼ばれる少女。人々からは「竹姫」と呼ばれる。羽磋に「輝夜」(かぐや)という名を贈られるが、それは二人だけの秘密。

【羽磋】(うさ) 竹姫の乳兄弟の少年。貴霜(くしゃん)族の有望な若者として肸頓(きどん)族へ出されることとなった。大伴の息子。幼名は「羽」(う)

【翁】(おきな) 貴霜族の讃岐村の長老。夢に導かれて竹姫を拾い育てた。本名は造麻呂。

【大伴】(おおとも) 羽の父。貴霜族の若者頭で遊牧隊の隊長。少年の頃は伴(とも)と呼ばれていた。

【阿部】(あべ) 大伴の先輩で良き理解者。肸頓族の族長。片足を戦争で失っている。

【小野】(おの) 阿部の信頼する部下。片足を失くした阿部に代わっ

て、交易隊を率いている。小野と言う名前だが、30代の立派な成人。

【御門】(みかど) 月の民の単于(王)。

【冒頓】(ぼくとつ) 烏達渓谷の戦いで大敗した匈奴が月の民へ差し出した人質。匈奴の単于の息子。小野の交易隊で護衛隊長をしている。

【苑】(えん) 匈奴から冒頓に付き従ってきた従者の息子。成人していないので、親しいものからは「小苑」(しょうえん)と呼ばれる。

【王花】(おうか) 野盗の女頭目

【王柔】(おうじゅう) 王花の盗賊団の一人。交易隊の案内人。

【理亜】(りあ) 王柔が案内をしていた交易隊が連れていた奴隷の少女。

 

 

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【あらすじ⑱】

 物語は、元の時間に戻ります。

 それは、王柔たちがヤルダンを通り抜けて土光村に着いてから、約一か月後のことでした。

 讃岐村から西へ進んでいた小野の交易隊も、交易路の中継地点として栄えている土光村に辿り着きました。

 小野の交易隊はとても規模が大きく、運んでいる荷も多かったので、小野は村が近づくと先触れを出して、逗留する間の準備をさせました。常に丁寧な仕事を心掛ける小野らしい周到な準備により、交易隊は村に着いた後も滞りなく作業を進めることができるのでした。

 遊牧民族の国である月の民の中で、この土光村は日干し煉瓦造りの倉庫が立ち並ぶとても珍しい村でした。交易路の中継地であることから、様々な道を行き交う交易隊はここで一度荷を下ろし、他の交易隊と交流を図って、自分たちが行っていない地方の荷も手に入れようとするのでした。

 羽磋は交易隊に同行はしているものの「留学の徒」でしたから、交易隊の仕事を手伝う必要はありませんでした。でも、交易という自分の経験したことのない仕事に興味津々の羽磋は、自ら手伝いを申し出ました。そんな羽磋を見つめる小野のまなざしは、とても暖かなものでした。

 積極的な羽磋の態度に好感を持った小野は、倉庫への荷入れなどの遊牧生活では経験できなさそうな仕事に、羽磋を案内するのでした。

 忙しく人が出入りする搬入作業の中で、さりげない様子を装いながら、小野は羽磋の耳元に口を寄せました。

「実はご相談があるのです。交易路で困ったことが生じているという情報がありまして・・・・・・」

 交易路で問題が生じているということであれば、もちろん、土光村を経由して阿部がいる吐露村まで行こうとしている羽磋にもかかわりがあります。でも、旅の専門家である小野が、旅の経験に乏しい羽磋に対して、そのような問題を相談しようというのは何故なのでしょうか。

「その問題には、月の巫女の力が関わっている可能性があるというのです」

「ええっ」

 羽磋は驚いて小野の顔を見つめました。羽磋は、まさかここで「月の巫女の力」の話が出るとは思ってもいなかったのですが、それこそが、小野が羽磋に相談をもちかけた理由なのでした。

「搬入作業が終われば、皆が楽しみにしている慰労会です。その時に、詳しくお話し致します」

 小野は羽磋にそのようにささやくと、すぐに作業の指示に戻っていきました。彼のところには、荷をしまう場所や逗留の手続きについての相談をするために、次々と人がやってきます。たしかに、今ここで込み入った話をすることは、できなさそうでした。

 羽磋は、今は少しでも小野がやっている作業を勉強しようと、ざわめく心をなんとか落ち着かせながら、彼の後を追うのでした。

 

 

 その日の午後のことです。

 ようやく一連の搬入作業が終了しました。最低限の人数は、村の外に設営している天幕や駱駝の管理の為に残さないといけませんが、それ以外の交易隊員は全て王花の酒場に集まっていました。

 彼らがゴビの砂漠の厳しい環境にさらされながら、ずっと楽しみにしていたのが、この慰労会、つまり、宴会なのでした。

 王花の酒場は小野の交易隊で貸し切りの状態になっていました。彼らは店の外にまであふれて、何度も酒を酌み交わし、肩を組んで歌い、大声をあげて笑いあっていました。

 もちろん、その中には苑の姿もありました。この旅の中で大きな成長を遂げたと冒頓にも認められ、初めて酒場に座ることを認められたのでした。

 苑は嬉しくって仕方がありませんでした。これまでであれば、村の外の天幕の中で乳酒を飲みながら駱駝の番をしているところです。それが今回は、酒場で大人の皆と一緒に、アルヒという強い蒸留酒を飲んでいるのですから。

「いいっすか、羽磋殿。ピーピーピーです」

「えーと、ピーピーピィー・・・・・・だろ?」

「ちがうっす。やり直しっす。もう、羽磋殿は、羽磋殿は、空風が可愛くないんすかぁ?」

 初めて飲むアルヒにすっかり出来上がってしまった苑は、羽磋に対して空風への指笛の合図について、懇々と説明をしていました。自分の大好きな空風のことを話したくて仕方がないのです。でも、少々、いや、大分、お酒のせいで度が過ぎてしまっているようでした。おかげで、宴の中ごろになって、酒場の奥へ来るように呼ばれたときには、羽磋は指笛の合図をすっかり覚えてしまっていました。

「やれやれ、苑のやつ酒癖が悪いなぁ。空風は自分の指笛にしか反応しないって、自慢してなかったっけ?」

 首を振りながら店の奥へ消えていった羽磋の背後では、日頃から可愛がってもらっている交易隊の先輩たちから次々に酒をすすめられる、苑の嬉しそうな姿があるのでした。

「ほら、小苑、飲め!」

「あざっす、いただきます!」

「おや、杯に酒が残ってるじゃねぇか。先輩についでもらうときには、杯を空けるってもんだ」

「すいませんっす・・・・・・、んぐっ。ふっぅ。いただきます!」

「おおぅ。やっぱり若い奴は気持ちがいいなぁ。それ、飲め飲めぇ!」

 やがて、したたかに酔いが回った男たちは立ち上がり、「ゴビを行く交易隊」や「帰りを待つあの子」などの唄を、陽気に杯を掲げながら歌いだすのですが、そのころには、苑は前後不覚で机の上に突っ伏してしまっているのでした。

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