梅雨の走りの雨が止み
僕は傘を畳んで家路を急ぐ
一刻も早く黒雲を払いのけようというのか風が騒ぎ
大きく張り出した木々の枝が震える
道には大きな水たまりができていて
靴を濡らしたくない僕は 途方に暮れる
すうっと傍らを通り抜けた風が木の葉から落としたのは
一粒の水滴
ぶわわわ
雲と風が押し合う空を映していた水たまりは
水滴を受け止めた個所を中心に 揺れる 揺れる
それは幾重にも重なる円を描いて 広がる
ぴちょん
肌にまとわりつくような湿った空気は
水滴が落ちた箇所を中心に 震える 震える
それは幾重にも重なる球を描いて 広がる
円が 球が 広がり 薄れ 消えた後
水たまりに映る空は 先ほどまでより明るくなり
道を通り抜ける風は 先ほどまでより乾いている
僕は 水たまりの空を壊さぬよう 注意深く歩いて
ゆっくりと家路を楽しむ