コトゴトの散文

日常のコトゴトが題材の掌編小説や詩などの散文です。現在は「竹取物語」を遊牧民族の世界で再構築したジュブナイル小説「月の砂漠のかぐや姫」を執筆中です。また、短編小説集をBOOTHで発売しております。https://syuuhuudou.booth.pm/

【閑話】 150編のマイルストーン  メイキング オブ 「【寓話】金色の魚と水槽」

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 みなさん、こんにちは。くにんです。

 毎日暑いですね。(^-^; 

 冬は寒く、夏は暑い。それが日本の気候であって、それが崩れると農業やらなんやらで色々と不具合も出てくる・・・・・・、とはいっても、酷暑ですよね。(>_<)

 「冷房を適切に使用してください」と、天気予報の中でも注意喚起される昨今です。みなさん、暑さ対策を充分に意識して、くれぐれも体調にはお気を付けください。

 

 

 さて、おおよそ150編のマイルストーンです。

 小説と詩の合計とマイルストーンの数を合わせようと、若干、ショートシフトしております。ちょっと一休み。肩の力を抜いて、閑話です。

 

 

 まずは、御礼を。

 いつも「月の砂漠のかぐや姫」を始めとする創作や閑話を読んでいただいて、ありがとうございます! 

 「月の砂漠のかぐや姫」も、もうすぐ100話になろうとしています。もちろん自分が好きで書き始めた作品なわけですが、仕事や家事の合間を見ながら長く書き続ける中には、楽しい面だけではなく、やはり大変な面もあります。あっちで時間を削り、こっちで何かを我慢しつつも、楽しみながら「月の砂漠のかぐや姫」を書き続けられているのは、読んでくださっているみなさんの存在があってのことです。本当にありがとうございます!

 まだお読みでない方、1話約2000字、週1回から2回の更新なので、今から読み始めても充分追いつけますよ。ゴビの砂漠を舞台に遊牧民族の少年少女が頑張る、竹取物語をオマージュしたファンタジー物語です。竹姫や羽とご一緒に旅してみませんか。


www.kotogotono.com

 

 

 

 さてさて、前回のマイルストーンでは、先日(6月26日)参加した「おっさんず オフ会 in 関西」での創作談義の流れで、僕の「小説を書くときに一番大切だと思うこと」と「自分の小説の書き方」を書きました。

 今回はそれを進めて、先日投稿いたしました「【寓話】金色の魚と水槽」のメイキング話を書きたいと思います。

 オフ会の時にも、参加されていた方の作品の作り方を聞いて、すごく楽しかったので。(*^-^*)  

 

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◆メイキング オブ 「【寓話】金色の魚と水槽」

◇【寓話】金色の魚と水槽 の製作背景

 これは、 ムラサキ (id:murasaki_kairo)さんがnoteで編集されているアンソロジーに、投稿した作品です。このアンソロジーでは、毎月一つテーマを決め、それを基に参加者が作品を作り投稿するというものです。

 今月のテーマは「水槽」でした。テーマ発表から締め切りまでの時間は、おおよそ一か月。その一か月の間には、もちろん「月の砂漠のかぐや姫」も書き続けますし、F1などについての雑記ブログ「ぼちぼちメモ」の更新もしていきますから・・・・・・あー、いそがし、いそがし、です。(^-^;

note.mu

 

 

◇下準備1

 テーマが決まりましたので、漠然とですが、どんな話にするかを、ぐるぐると考えます。机に座って紙に書き出したり、パソコンなどで無作為にキーワードを発生させて組み合わせたり、色々なやり方があると思いますが、僕はまとまった時間を取るのではなく、生活しながら頭の中でコネコネとすることが多いです。通勤の時間や風呂に入っているときなどに、「あーしたらこーなって・・・・・・」とぼんやりと考えるのです。

 そうして、最初にぼんやりと出来上がったものは、次のようなものでした。

 

 

「白一色の空間。理科室。水槽に魚が入っている。傍らに置かれている試験管のような容器には、様々な色をした試薬。部屋には男が一人いて、自分に実験を勧めてくる。試薬を水槽に垂らすと、中に棲む魚が新しい薬を吐くのだ。試薬に貼られているラベルには、「愛」、「悲しみ」、「怒り」などの文字が。どのようなものを与えれば、どのようなものが得られるのだろうか・・・・・・。主人公がいろいろと試す姿を描いた後で、物語の最後にいきなり読者に問う。あなたならどうしますか、と」

 

 

 はい、そうですね。完成した作品とは、まったくつながりがありません。(^-^; 一度は形になりかけたものの、結局ボツとなっちゃいました。イメージは好きなのですが、作品にするとなると、もう一つ広がりが欲しい。でも、その広がりが浮かんでこなかったんですね。いろいろと試すところを膨らませるのでしょうが、あまりに膨らませすぎると時間が足りなくなりそう‥‥‥。以前の「黒い羊」がこの「膨らませすぎて苦労した」パターンでした。ちょっと手の込んだボリュームのある作品には、現状ではなかなか手が出せません・・・・・・。

 そこで、改めて一から考えることになりました。うーん、うーん。そうだ、「童話」なんてどうだろう。

 ここで「童話」が出てきた経緯は忘れました。(^-^; でも、前から「童話」を書いてみたいという思いはあったのです。そこで、「童話」について調べてみたところ、「童話」の中にも「寓話」というジャンルがあることに気がつきました。「童話」と呼ばれるものの中で、動物などの擬人化や、教訓が盛り込まれているストーリーを特徴としたものが、「寓話」と呼ばれているそうなのです。

 「ほほぅ、これは面白そうだなぁ」と思いました。割とシンプルにまとまりそうですし。(^-^;

 この結果、「寓話」と「水槽」というテーマで、「あーでもない、こーでもない」とコネコネする日々が始まるのでした。

 

 

◇下準備2

 「寓話」というテーマでグルグルと考えていた時に頭に浮かんできたのが、フレデリックというバンドの曲「人魚のはなし」の一節でした。

 「彼女はいつも うろこを磨いていました」

 うろこを磨くんですよ! 自分の美を高めるために!! 実に耽美なモチーフではありませんか。

 この素晴らしいフレーズが、今回の作品の出発点となりました。


フレデリック「人魚のはなし」Music Video

 

 

 とはいうものの、でき上った作品が「人魚のはなし」にはならないのですから、不思議ですね。(我ながら) 「水槽」というと、大きな水槽の中で人魚が飼われているシーンが出てくる映画かアニメがあったような気がするのです。それで、それを避けようという意識が、自分の中にあったのかも知れないですね。

 

 

 「ナルシストな魚」に関する教訓話で「水槽」に繋げる。ここまでは、自分の中で固まってきました。これを、コネコネしていると・・・・・・、

  •  ナルシストな魚が神様に咎められる
  •  水槽に移される
  •  魚は自分の誤り(過度なナルシズム)に気づく

 という流れが、出来上がりました。

 そこで、それを活かす世界を創っていくことにしました。資料、資料っと・・・・・・。最近は、インターネットでいろいろと調べられるので便利ですね。流石に「月の砂漠のかぐや姫」を始めるときには、いろいろと文献を購入して読むなどして、勉強しましたが・・・・・・。あ、それも、インターネットで資料になる本を調べて購入したのだった。やっぱり、インターネットのお世話になっていました。

 

 

 インターネットを巡回する中で自分の興味を引いたものを集めて、場面を創っていきます。

  • ローヌ川・・・・・・寓話というと、キリスト教化が進む前のヨーロッパの土着宗教との絡みが思い浮かびます。(個人の感想です(^-^;) ヨーロッパの川を調べたところ、大きな川の中でこの川だけが男性名詞ということなので、面白いかなと思いここを舞台にすることにしました。もっとも、その点は、作品には反映されずに終わったのですが。
  • タラスク・・・・・・ローヌ川を調べていたところ、辿り着きました。伝承だと怪物なのですが、作品に必要とされているのは怪物ではなく神様です。本作では、川の守り神として登場していただくことにしました。舞台となる町の名「タラスコン」がタラスクの名から来ているという設定は、伝承からいただきました。
  • マルタ・・・・・・伝承では怪物タラスクを信仰の力によって静めた聖女の名が「マルタ」です。本作では怪物タラスクが川の守り神になったことから、ナルシストな魚の名前に「マルタ」をいただきました。元ネタを知っている人がいれば、逆転の関係に「くすっ」としてもらえるかな、というところです。因みに、静められた怪物タラスクですが、彼に長らく苦しめられた町の人たちに、石つぶてでもって打ち殺されてしまいます。
  • 絵描き・・・・・・ローヌ川をモチーフにゴッホが「ローヌ川の星月夜」という作品を描いています。時代こそ、本作の舞台は紀元前(ローマ人が進出してきた時代なので)で、ゴッホが19世紀、と離れてはいるのですが、遊びというか、プラスアルファの要素として、ゴッホを思わせる絵描きさんに登場していただきました。

 

 

◇本文製作1

 だいたいの材料がそろい、頭の中で大まかに場面ができ上がりました。当初のメモを見てみると、次のような感じです。

 

  • 始め・・・・・・川の中。タラスクが高慢な魚マルタに説教をする。全く聞き入れないマルタにわからせるため、町の中に豪華な水槽を造り、そこに彼女を移す。
  • 前半・・・・・・水槽の前をたくさんの人が通り過ぎるが、みんな水槽にしか興味を示さない。彼女には気がつかない。
      •  町の指導者が通りかかる。立派な水槽を見て、自分のために立派な建物を建てようと考える。
      •  教育者が通る。水槽と魚を見て、「君たちはこれまで学校という水槽の中で飼われてきた魚だったが、これからは社会という自然の中で生きて行かなければならない」という、卒業式用のスピーチを思いつく。
      •  宗教関係者が通りかかる。この水槽は神が作ったこの世界、魚は我々。魚が水槽から出られないように、我々も神の御手の中から出ては生きていけないのだ、と演説する。
      •  環境学者が通りかかる。我々の世界はこの水槽のようなもの。これを汚しては中にいる魚である我々自身が苦しくなるのだと考える。
      •  絵描きが通りかかる。描いた絵に出てくるのは、立派な水槽だけ。
  • 後半・・・・・・誰も自分に気づいてくれないと落ち込むマルタに、タラスクが諭す。うろこを磨くだけで何もしていないではないか。タラスクの言葉で、泳ぐことを思い出したマルタ。通りかかるものも少なくなった水槽に、ある日少年と母親が通りかかる。どうやら少年は下半身が不自由な様子。少年の目には、豪華な水槽など何の力も及ぼさない。彼の目に映ったのは、水槽の中を楽しそうに泳ぐマルタの姿だった。
  • 終わり・・・・・・少年に気がついてもらえて、マルタは泳ぐという魚の本質を思い出す。少年はその夜、夢を見た。自分が魚たちと楽しく泳ぐ夢を・・・。

 

 この段階でも、でき上がった作品とはかなり異なります。ここから、まだまだ、コネコネとして形を整えていきます。

 

 

◇本文制作2

 頭の中でコネコネして、要素ごとの関係(後でこうしたいから、前もってこうしておく等)や、設定のバランス(時代があってない等)を考えて、より細かく場面を作り込んでいきます。実際に書くのは最後の最後ですが、書きながらでも気づけば修正していきます。書いてみて初めて気がつく点も、たくさんあります。(^-^;

 

  • 始め・・・・・・単純にナルシストなだけであれば、神様に諭されることもないでしょう。マルタがどのようなことで周りに迷惑をかけたかを書き足しました。それによって、諭された結果、彼女がどう変化したかが、わかりやすくなるという効果も狙いました。
  • 前半・・・・・・通りがかる人たちで、時代に合わない人を削っていきました。また、始めと関連して、マルタが何をしないから駄目なのかを明確になるようにしました。教訓話なので、「駄目な点があるから良い結果が得られない。それを直した結果、良い結果が得られるようになった」という流れを、強く押し出したいと思ったのです。結局、通りがかる人たちの中で残ったのは、絵描きさんだけでした。しかし、絵描きさんは、最初は豪華な水槽から着想を得て星空の絵を描き、水槽すらなくなった時にはその場を通り過ぎてカフェの絵を描いたのに、銀色の魚が踊りを踊る時には魚の絵を描きます。絵描きさん一人に絞ったことで、伝える側の変化によって同じ人でも違う反応が生じるということが、強調できたと思います。
  • 後半・・・・・・銀色の魚が登場して、マルタと違って人々に愛されることにより、彼女に何が欠けていたかを考えさせることにしました。前述のように、絵描きさんは、この対比に、一役買ってくれました。タラスクがマルタをくわえて飛びあがっていくところなどは、書きながらのアドリブです。少年は出てこないことになりました。少年が出てくると、「少年の無垢な心が、豪華な水槽に惑わされずにその中の魚を捉えた」という要素が、話の中に入ってきてしまいます。教訓話として、マルタの行動により周りが変化していくというところに、話の要素を絞り込みたかったので、この要素を外したわけです。
  • 終わり・・・・・・少年が出て来なくなったので、終わりも変わりました。アドリブで空に上がったことを活かして、あのような終わりとなりました。教訓話としてテンプレ的な終わり方ではありますが、その結果、まとまりは良くなったと思います。この流れも、書きながらのアドリブです。もっとも、伝承を知っているこちらとしては、大人しくしているマルタとそれを満足げに見守るタラスクを書きながら、どうしてもニヤニヤとしてしまうのでしたが・・・・・・。

 

 

◇本文製作3

 仕上げです。一日寝かしました。単純なタイプミスももちろんですが、頭の中で出来上がった場面を文章として再現する作業の中で、世界に入り込んでしまって、上手く文章になっていないことも、よくあるのです。そのため、できるだけ時間を置いて、頭を冷やしてから見直しをするようにしています。

 タイプミスもこの時に訂正します。僕はタイプミスのチェックのために、小さな声で音読をするようにしています。黙読だと、どうしても文字の上を目が通過していってしまうので。音読をするようにしてから、以前よりもタイプミスに気がつけるようになりました。

 

 

◇画像

 毎回、作品のイメージ画像を冒頭に添付しています。今回は、本文に出てくる水槽に近いイメージの写真を、フリー写真のサイトからいただいて、それを「Go Art」というアプリで、「ゴッホ風」に加工しました。いやいや、最近のアプリは凄いですねぇ(*´▽`*)

taupe.site

 前述のように、ゴッホの活躍した時代と本作の時代には、かなりの差がありますし、ゴッホという要素はプラスアルファのお楽しみに過ぎません。単なる絵描きさんでも十分なのですから。

 それで、このイメージ画像を載せた方が良いのか、それとも加工なしのものの方が良いのか迷いました。最終的には、使わせていただいたのですが。どちらが良かったでしょうか・・・・・・。これはちょっと、今でも判断をつけかねております。(^-^;

 因みに、元画像と加工後の画像は、こちらです。

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 今回は「【寓話】金色の魚と水槽」のメイキング話でしたが、来月のアンソロジーのテーマも発表されております。今度は「香水」です。また、ぼんやりとコネコネするところから始めたいと思っていますが・・・・・・。難しいです。(笑)

 あ、「月の砂漠のかぐや姫」も進めますよ! 王柔君にとっては、今が正に頑張りどころなのですから!! こちらも、よろしくお願いします。

 

 

 いつもよりも長くなってしまいました。最後までお読みくださり、ありがとうございました。

 冒頭に書きましたとおり、酷暑です。さらに、台風も接近しております。

 みなさま、酷暑対策、自然災害対策には十分に気を使い、楽しい夏をお過ごしください。

 そしてまた、次のマイルストーン、「160編のマイルストーン」でお会いいたしましょう。

                                  くにん